本書の内容

科学者の大発見による光と影。人は大胆なウソほどだまされる!?

新型コロナウイルスの流行、
この本は、科学者たちの発見を通してウソ(捏造)が暴かれるさまを描いています。それはまさに、人間がウソをつきバレるのと一緒です。
ただし、こと世間を騒がせたセンセーショナルな発見(ウソ)は、その代償も大きなものになります。
昨今、ネットではフェイクニュースや誹謗中傷がはびこり、その匿名性から真実が見えなくなっています。
いっぽう、科学の世界では論文の精査によって、間違った論拠や改ざんされた画像が見破られてしまいます。それでも科学の世界に捏造が消えないと著者は主張します。

「捏造を根絶することはできません。しかしだからといって捏造はやり放題というわけでもありません。捏造は必ず発覚します。捏造された研究成果は自然科学の法則に反するため、追試は失敗し、他の研究結果と矛盾し、遅かれ早かれ否定されます。

つまり、科学は異物を排除する免疫機構を備えているのです。」

科学史というテーマでありながら、この科学が担う免疫機構は社会のウソに一石を投じるはずです。

「登場するのは誘惑に弱い人間で、あつかわれるのは過ちの瞬間です。彼ら彼女らの叶わなかった夢と野望が社会に波乱を及ぼすさまを、歴史上の事件として記述するのが目的です。」

著者は大学で教鞭をとるかたわら、科学の面白さを一般に広く伝える著作活動を展開しています。そして本書は、撤回された科学論文をできる限り入手し、一文一文読み込んでいます。
さらに、本書に登場する9人の科学者たちの事件を、社会を騒がせた影響度も含め、☆で評価しています。

この不可思議な科学の世界の光と影は、現代社会の見えない真実への教訓となるのではないでしょうか。

「人間は様々な動機から嘘をつきます。コミュニティの中で成功したい、承認されたい、利益が欲しいといった、利己的な理由からつく嘘があります。他人を操作したい、傷つけたいといった悪意のある嘘もあるでしょう。また、いくら考えても合理的に説明できない、不可解な嘘をつく人もいます。
嘘の中でも科学の捏造には際立つ特徴があります。捏造研究者は大発見を報告します。常識を覆し、人々の認識を変え、社会を変革する成果が得られたと主張します。そういう科学の新たな勝利に、私たちは感嘆し、胸躍らせます。
いい換えると、科学の捏造には『夢』があるのです。」


※本書は2005年7月にdZEROから刊行された
『科学者はなぜウソをつくのか』を改題・加筆・再編集したものです。

目次

はじめに

第1章 10万人のCOVID-19治験データ——サージスフィア事件
パンデミック
COVID-19を迎え撃つ先端科学
疑惑のヒドロキシクロロキン
事件後と事件前
まとめと評価——捏造は瞬時に指摘される時代に

第2章 常温核融合——大学間の対抗意識から始まった誤りの連鎖
ユタの核開発競争
発端は研究助成申請書
急ごしらえの世紀の発表
いまだ実現しない人類の夢
世界的に巻き起こったフィーバー
ポンズ教授の奇妙なガンマ線
そして信者が残った
まとめと評価──いまだに信じる人もいる

第3章 ナノテク・トランジスタ——史上最大の捏造・ベル研事件
8日に1本の第一級論文を発表する若き天才研究者
別の論文のグラフにそっくり
絢爛豪華な実績の数々
同僚が偶然、捏造を発見
捏造者に共通する弁明
まとめと評価──革命級のホラ話

第4章 ヒトES細胞——スター科学者の栄光と転落
「第一号最高科学者」
禁断のヒト・クローン
疑惑報道と熱狂的な支持者
よくいえば大胆、悪くいえば稚拙
真犯人
まとめと評価──本当なら「夢のある捏造」

第5章 STAP細胞——捏造を異物として排斥する「科学の免疫機能」
リケジョ旋風
万能細胞の開く新しい医療
論文までの苦難の道のり
うっかりミスはありえない
広がる波紋
手品の種明かし
まとめと評価──科学の免疫機能が素早く働く

第6章 118番元素——新元素発見競争でトップを狙ったバークレー研事件
まだ誰も見たことのない合成実験
栄誉ある新元素発見
ドイツからやってきた錬金術師
世界のトップに躍り出たバークレー研
消えた118番元素
まとめと評価──関心の高い分野で巧妙に

第7章 農業生物学——スターリンが認めたルィセンコ学説
「ブラボー、同志ルィセンコ、ブラボー!」
学術論争がイデオロギー論争に
弁証法的唯物論に基づく学説
ルィセンコ、農業アカデミー総裁に
遺伝学研究所を乗っ取る
アカデミー総会へのスターリンの介入
驕れる者久しからず
まとめと評価──悪意に満ちた論文

第8章 皮膚移植——サマーリンのぶちネズミ
簡単な方法で皮膚移植が実現?
誰にも信じてもらえない
黒いぶちの正体
知的なはずの医学研究者が?
まとめと評価──捏造発覚までの最短記録

第9章 旧石器遺跡——暴かれた「神の手」の正体
隠しカメラがとらえた瞬間
日本に前期旧石器時代はあったのか
超能力者のごとき扱い
考古学者の悪夢
「教育委員会」対「神の手」
原人ラーメン、原人クッキーにマスコットまで
発覚後、周囲の研究者たちは
最大規模の検証
まとめと評価──働かなかった「科学の捏造排除機能」

索引

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著者プロフィール

小谷太郎(こたに・たろう)

博士(理学)。専門は宇宙物理学と観測装置開発。
1967年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒。理化学研究所、NASAゴダード宇宙飛行センター、東京工業大学、早稲田大学などの研究員を経て国際基督教大学ほかで教鞭を執るかたわら、科学のおもしろさを一般に広く伝える著作活動を展開している。
『見れば見るほど面白い「くらべる」雑学』(三笠書房)、『宇宙はどこまでわかっているのか』(幻冬舎)、『宇宙の謎を探れ!探査機・観測機器61』(ベレ出版)など著書多数。

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